コラム

遺贈

弁護士 幡野真弥

 遺言によって、他人に相続財産を与える行為を遺贈といいます(民法964条)。
 遺贈は、原則として、誰に、何を譲渡するか、自由に決めることができます。
 遺贈を受ける者を「受遺者」といいます。

 遺贈には、特定遺贈と包括遺贈の2種類があります。

 ■特定遺贈
 遺言者が、特定の財産を遺贈する場合を特定遺贈といいます。
 例えば「不動産AをXに遺贈する」との遺言や、「現金100万円をYに遺贈する」との遺言などです。

 なお、「特定の遺産を特定の相続人に相続させる」という内容の遺言は、「特定財産承継遺言」と呼ばれ、遺贈ではなく、原則として遺産分割方法の指定にあたるとされています(最高裁平成3年4月19日)。

 特定遺贈の受遺者は、いつでも遺贈を放棄することができますが(986条1項)、受遺者が遺贈を承認する意思表示をすると、遺贈の効力が確定します。

 遺贈の効力が発生すると、遺贈の目的物の所有権が遺贈者から受遺者に直接移転します。ただし、不動産は登記を具備しないと第三者に対抗できません。

■包括遺贈
 遺産の全部または一定割合で示された部分を受遺者に与える行為を包括遺贈といいます。
 例えば「財産全部をXに遺贈する」「財産の2分の1をXに遺贈する」などの遺言です。
 前者を全部包括遺贈、後者を割合的包括遺贈といいます。
 民法990条は、「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する」と定めていますので、包括受遺者は、積極財産だけでなく、消極財産(負債)も承継することとなります。