コラム

特別受益か否かが問題となるもの

弁護士 幡野真弥

今回は、特別受益の具体例をご紹介します。

■遺贈と「相続させる」遺言
 相続人に対する遺贈(特定遺贈、包括遺贈)は、特別受益となります。遺贈とは、遺言によって他人に自己の財産を与える行為です(民法964条)。
 遺言で、特定の財産について、特定の相続人に「相続させる」旨を記載している場合は、遺産分割を経ずに特定の財産は当然に特定の相続人に移転しますが、この「相続させる」旨の遺言で対象となった財産も、特別受益となります。

■婚姻・養子縁組のための贈与
 婚姻や養子縁組の際の持参金、支度金といったものも、特別受益となります(ただし、金額によっては特別受益とならないこともありえます)。結納金や挙式費用は、通常は特別受益とならないとされています。

■大学の学費・入学金
 高校や大学の費用であれば、扶養義務の履行に過ぎないとして特別受益とは扱われないことが多いようです。ただし、扶養義務の範囲を超えるものであれば、特別受益となることもありえます。

■生命保険金
 原則、特別受益とはなりません。ただし、保険金受取人である相続人と、その他の相続人との間で著しい不公平が生じる場合は、特別受益に準じて持戻しの対象となります(最高裁平成16年10月29日決定)。

■死亡退職金
 原則、特別受益とはなりません。ただし、反対説もあります。