コラム

特別受益の持戻し

弁護士 幡野真弥

 前回のコラムで、特別受益についてご説明しました。
 今回は、その続きです。
 被相続人は、持戻しの免除をすることができます(民法903条3項)。
 持戻しの免除があったときは、被相続人が、相続分とは別に贈与をするという意思で生前贈与をしたものと考えられます。したがって、持戻しの免除があったときは、前回のコラムでご説明したような計算、つまり生前贈与を相続財産に持戻したうえで具体的相続分を計算する必要はなくなります。ただし、持戻しの免除によっても遺留分を侵害することはできません。

 持戻しの免除の意思表示をするにあたっては、特別の方式は必要ありません。
 明示や黙示でもかまいませんし、必ずしも遺言で行う必要はありません。ただし、将来の紛争を予防するためには、遺言等でおこなっておくことが望ましいでしょう。

 なお、被相続人が20年以上婚姻関係にある配偶者に対して、居住用不動産を遺贈・贈与した場合は、持戻し免除の意思表示があったと推定されます(民法903条4項)。