コラム

相続の放棄と承認〈総論〉

弁護士 幡野真弥

 相続が発生すると、相続人は、相続を放棄するか、承認する(単純承認か限定承認)か、選択する必要があります。選択しないまま一定の期間が経過すると、法律上、相続を承認したものとみなされます。

 相続の単純承認とは、無限に被相続人の権利義務を承継するという意思表示です(民法920条)。
 民法921条は、以下の事由が存在するときは、相続人が単純承認の意思表示をしなくても、相続人が単純承認したものとみなされます。これを法定単純承認と言います。

 限定承認とは、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して相続を承認する旨の意思表示です(922条)。
 限定承認がなされると、相続財産中の積極財産から相続債務や遺贈が弁済されます。残った積極財産があれば、相続人に帰属します。積極財産で弁済しきれなかった相続債務や遺贈が残っても相続人は弁済の義務を負いません。

 相続放棄とは、相続の効果を全面的・確定的に消滅させる意思表示です。相続放棄は、3ヶ月の熟慮期間中に、家庭裁判所に申述して行います(938条)。相続の放棄により、その相続に関してはじめから相続人ではなかったものとみなされます(939条)。

 次回以降のコラムで、単純承認、限定承認、相続放棄についてそれぞれ説明していきます。